気まぐれ日記 05年7月

05年6月はここ

7月1日(金)「我が家のゴキハンターに二度びっくり・・・の風さん」
 いかにも梅雨らしい空の下、私はミッシェルのハンドルを握り、家路についていた。
 ときおり雨粒がフロントウィンドウを濡らす。すかさずワイパーが雫を払うが、また陰気な風景が目の前に展開する。それでも、帰宅時の精神は高揚している。最近は執筆が進んでいるからだ。
 なぜ急に筆が進み出したのか。
 土壇場になったからか。火事場の馬鹿力か。気合か。……。
 これまで人物設定を何度も何度もしてきたが、なかなかキャラが固まらなかった。今でもピタリと決まっているわけではない。書きながら次第に人間が立体的になってくることは多い。まして陰影までとなると……。
 それではいけないのだが、とにかく、ようやく登場人物が人間らしくなってきて、物語というより私の再現する歴史の中で、人物が動き出したのだ。それが大きい。
 帰宅して、事件があった。我が家で飼っているペコの話だ。こいつがときどきゴキをつかまえることは知られている。夕食が終わってすぐのことだった。隣のサンルームでペコが何かにじゃれていた。
「ああ〜っ、ペコがまたゴキブリをつかまえたぞ」
「いや、またムカデかもしれない」
 私がサンルームに入って見てみると、ペコがじゃれているのはワイフのスリッパだった。スリッパはひっくり返っていた。その裏側のあたりをペコが手でさかんに引っ掻く動作をしている。
「ひっくり返してご覧よ」
 ワイフの冷たい指摘に、勇気を奮って、私はさっとひっくり返してみた。
 瞬間、私の体が垂直に飛んだ。
「ゴキだー!」
 茶色の丸いヤツがアップアップしてやがる。それをペコが手で叩き、続いてくわえて噛んだ。
 私がゴキジェットでトドメを刺したのは言うまでもない。
 午前零時前、ようやく次女が風呂から出たので、私は風呂に入ることにした。
 洗面所で服を脱いで、風呂場の電灯をつけて、入った……すると、浴槽のフタの上にペコが寝そべっていた。
 ペコは家人と一緒に入浴するおかしな猫だった。

7月2日(土)「ワイフのトール作品展・・・の風さん」
 空は連日どんよりとしていて、いつ降り出してもおかしくない。こういうときは気分も憂鬱になるものだが、今の私は違う。もう後がない、と叫んでから、せっせと執筆に励んでいるからだ。目標は、今月末までに400枚の第一稿を出版社に提出すること。そのための詳細な計画も作成し、今はそれにできるだけ従って原稿枚数を積み上げている。
 昼過ぎまでに、今日予定した分を書き上げ、午後からワイフの手伝いに外出した。
 ワイフは自宅でトールペインティング教室を開いている。その教室の作品展を開催中で、後片付けの手伝いをするために出かけるのだ。ミッシェルのハンドルを握って出発したら、とうとう空が泣き出した。やがて土砂降りに。東京雨男は、地元でも雨を呼ぶらしい。途中で、手伝ってくれた生徒に配るためのサンドイッチを買い、会場に着くと、愛用のデジカメで写真撮影。テーマごとにディスプレイしてあるのだが、先生(ワイフのこと)と生徒の作品が渾然一体となっていて響き合っている。また、トールペインティング以外の小道具がけっこう効果的に配置してあり、見て楽しい。
 ほぼ正方形の会場の2面はガラス張りで中庭が見通せる。それもオシャレだ。休憩中にコーヒーとシュークリームが出て、執筆後の充実感も味わえた。窓の外のウッドデッキを雨に濡れながら大きなウマオイがのそのそ歩いているのものどかな眺めで、心の栄養となった。
 5時からは全員で後片付けとなった。さすがに20人もの生徒がいると早い。
 私はまだ執筆途中であるが、ワイフは先に自分の課題が一段落し、すっかり開放感に浸っている。うらやましい。

7月3日(日)「執筆し続ける風さんの巻」
 今日も朝から執筆の続きである。波に乗っているうちにどんどん書いていかねばならない。書きながら、こんな展開でいいのだろうか、もっとマシな書き方があるのではないか、と迷っていると結局何も書けなくなるので、もう目をつぶって書き続ける。
 夕方さすがに疲れてソファで1時間ほど仮眠してしまった。これで、今日もトレーニングに行くのを断念した。もうかれこれ一ヶ月くらい行っていない。体はナマルが、今は書き続けなければ。
 その後、また調べる癖が出て執筆が中断しかかった。それも何とか振り切って、午後11時半ころ、予定した展開の半分までしか話は進んでいなかったが、今日だけで20枚書けたので、とりあえず終了とした。
 現時点で下書きの総枚数は、272枚となった。あと130枚ほど書ければ、予定の400枚となるが、編集長が予想する最終到達枚数は600枚なので、できれば400枚を少しでも超えた状態で第一稿としたい。

7月5日(火)「楠木誠一郎さんの本は次女の餌食・・・の風さん」
 日曜まで順調に進んできた執筆が、昨日から頓挫している。大事な場面でアイデアに窮しているのだ。まるで競走馬のように前しか見ない姿勢で走ってきたが、やはりそれでは通らない。もう一度、ストーリーを再構築する必要があった。今日も時間さえあれば、そのストーリーを考えようとしたのだが、私はどうも頭の中だけで考えるのは不得意のようで、やはり書きながら考えることになった。
 今夜は、次女の中学校のPTAの役員会があったので、超特急で帰宅した・・・つもり。
 「あら、やっぱりPTAに行くの?」
 というワイフの冷たいセリフの言わんとすることは、「晩御飯の用意してなかった」だった。
 急いで、冷やしきしめんを作ってもらい、それを掻っ込んで中学校へ出発した。
 教頭先生の準備が完璧で、会議はスムーズに進み、9時前に帰宅できた。
 落ち着いて食卓を見ると、ぎょぎょ、またまた超量産作家、楠木誠一郎さんの新作が届いていた。『真犯人はそこにいる 帝都<少年少女>探偵団ノート』(ジャイブ 760円税別)である。長いタイトルだ〜。目立とうとしているのがよく分かる。待てよ。タイトルを眺めていて、ふと思いついた。これって、時代小説のタイトルに変換できそう。『下手人はそこでござる 大江戸<小僧小娘>捕り物帳』!
 「お父さん、この間の楠木さんの本、どこへやったの?」
 楠木ファンの次女が言う。
 「読まないでテーブルの上に放っておいたから、片付けた!」
 「返してよ」
 女性に弱い風さんは、ぶつぶつ言いながら書斎へ。
 「ちゃんと読んで、ハガキを書くんだぞ!」
 「分かってるって!」
 午前1時頃、ようやくストーリーの再構築ができた。あ、もちろん、自分の作品。

7月9日(土)「神罰で舌を切られた?・・・の風さん」
 今週は会社で毎日走りまくった。部下に指示しているだけではストレスがたまる。自分でやる方が気が楽、というわけで会議をほとんどサボって走り回ったわけ。楽しかった〜。
 空梅雨がちゃんとした梅雨に変化してから実に雨がよく降る。こういう時は、冷房をドライにして爽快にするのだが、ダイニングのエアコンが不調である。我が家には9台のエアコンがあるので、初期に設置したやつはだいぶ古い。その初期の1台なので、そろそろお陀仏かも。
 昼間執筆しながら書斎の窓から外を眺めると、電線に小鳥がびっしりととまっていた。雀ではない。渡り鳥が羽根を休めていたのかもしれない。こういう時によく観察してやろうと電線の下に行ってはいけない。たちまち糞の絨毯爆撃の餌食となる。
 昨日の朝から舌が痛い。左側面が切れている。ごくたまにあるのだが、なかなか治らないので厄介だ。喋るのも不便である。「嘘つくから神様が罰を与えたのよ」とはワイフの弁。そんな筈はない。嘘をつけばすぐに矛盾が生じてばれる。だから私は嘘はつかない。やばいことは喋らないに限る。そこへいくと、ワイフの方が危ない。彼女は寝言を言うから嘘はそれでばれる。ただし、彼女の寝言を聞くチャンスはほとんどない。なぜなら、私が就寝するとき、隣のベッドは空だし、私が起床する時は、既に隣のベッドは空になっている。え? もしかして、ひと晩中もぬけの空だったのではないかって? うーん、分からない。
 てなことを書いているが、今日は執筆を頑張った。とうとう下書き原稿が302枚になった。明日も頑張らねば。

7月11日(月)「舌切り雀とシロアリ・・・の風さん」
 昨日は資料調査に入ったとたん、泥沼に足をとられ、そのまま曇天の1日が暮れた。
 何とか気分を変えて目覚めたものの、今朝も舌が痛い。舌切り雀の風さんである。朝食はトーストとホットミルクが定番だが、今朝はホットミルクのみ。昼も冷麦のみで、アラカルトメニューは何もとらず。それで、1日駆け足で仕事して、夕方から月1回通院してメンテしてもらっている歯科医へ直行。「あれれ。歯ぐきが傷んでいますよ。ブラッシングはやさしくやってください」と叱られた。帰りに15日の新幹線の切符を手に入れ、ハガキを投函して、空腹で帰宅した。
 ミッシェルを車庫に入れると、ほうきとチリトリと殺虫剤を抱えたワイフが青い顔でやって来た。
「どうしたの?」
「窓の外に羽アリがうじゃうじゃいるのよ。シロアリじゃないかしら?」
「シロアリと普通の蟻の区別ぐらいできるだろ?」
「ええとー」
「ずんどうがシロアリ、モンローみたいなのが蟻」
 いきなりチリトリで殴られた。

7月14日(木)「もうあれから1年か・・・の風さん」
 梅雨らしい日々が続いている。今年の梅雨は長く感じられる。夏になると一気に秋まで駆け込んでいくのではないだろうか。数日間悩まされた舌切り雀状態もいつの間にか完治した。
 今週はさまざまな出来事があって、執筆に影響が出た。幸い体調は良いので、気合いで乗り切っている。復調すれば、挽回は早いだろう。
 特に大きな出来事は二つだ。一つ目は、知人からブロードバンドTVに出てみないかという誘いがあったこと。なんと1時間ものインタビューを受けるのだ。べらべら喋るだけならいくらでも喋れるが、すぐに馬脚を現すのがオチで、作家生命が終わりかねない。とは思いつつ、でもやってやれないことはないだろう、とタカをくくって、最新画像を視聴してみたら、チョーカッコいい先生が出演していた。大いに凹んだ。
 二つ目は、執筆のための資料調査の一環で、国立天文台を訪問することにしたのだが、きちんとした手続きを踏まないといけないことが判明し、申請手続きの準備をしたことだ。本郷にある東大の史料編纂所も同様だったから、少し東大の匂いがした。
 ちょっと鳴海風から脱線して、会社の出来事を書いておくと、今日は、午後2時から6時まで立ち続けて部下と実験をした。足が棒になったが、色々と判明したことがあって満足した。昨日は、職場のクリーンルーム内で排水ポンプが知らないうちに停止していたため、昼休み後に仕事のため入ったら、床が水浸しになっていた。それで、全員集合して、バケツと雑巾という原始的な方法で対応した。それで、昨日は、上半身の筋肉を鍛えることができた(なんのこっちゃ)。
 早く帰宅するつもりが遅くなってしまい、やっとのことで家に着くと、ワイフは町内会の盆踊りの練習に出かけていていなかった。そうか。昨年の今ごろは、町内会の役員として、さまざまな行事のために汗水流していたのだ。もうあれから1年か。

05年7月15日(金)「薮蚊と新鷹会の関係・・・の風さん」
 今日は新鷹会の理事会を仕掛けているので、1時間早く代々木八幡へ行かねばならない。それで、今日のスケジュールは、交通アクセスのつながりで最も無駄の少ないパターンを組み立てた。こうなると、昼食をゆっくり摂る間はないが、朝の出発は案外ゆっくりになる。ところが、不本意ながら睡眠不足の朝を迎えてしまった。そもそも就寝が午前2時を大幅に過ぎてしまったのだから(涙)。挽回するためには、予定通りの行動をする倍以上の気合いが必要である。とほほ。
 名古屋駅でホームへ上がるとすぐ乗り込む「のぞみ」が入ってきた。品川で山手線外回りに乗り換え新宿へ出た。450円の立ち食いそばで昼食とし、小田急線に飛び乗った。
 梅雨は明けていないが、夏のような暑さだ。代々木八幡の石段を登りながら、ふと昔を思い出した。勉強会で読もうと自作を携えてやって来たときのことだ。早めに到着した私は、鬱蒼と茂る樹木の中に入って行き、完全に日差しが弱くなっているあたりで腰を下ろすと、原稿用紙の下読みを始めた。修正すべき箇所があれば、その場で直した。熱心な姿は感動的だが、最後までその行為は貫徹できなかった。すぐに薮蚊が襲ってきて、じっと座っていられなかったからだ。
(ああ、そんなこともあったなあ。うっかり立ち止まったら、また薮蚊の餌食になる。さあ、急いで行こう)
 私は足早に歩いて行ったが、講堂に入ってから、足元に妙な感覚が走るのを感じた。痒い。痒いのである。靴下を脱いでみると、履いていた靴との境目のあたりが食われている! しかも両足とも!
 歩きながら、動かしている足が、靴下の上から、なんと薮蚊に食われた!
 理事会が終わり、勉強会が終わり、さらに代々木八幡駅近くで行われる恒例の2次会も終わった。
 普通は、この後、野村敏雄先生を中心にして(女性が周りを取り囲んで)、新宿で3次会となるのだが、今夜は先生が締め切りで多忙のため、3次会は「なし」となった。と同時に、その後の流れ解散が決定した。酒豪で話が面白く面倒見のいい野村先生は、女性らの人気の的である。「飲むら」先生かな(笑)。
 
7月16日(土)「国会図書館パート2・・・の風さん」
 また国会図書館へ行った。この間行ったばかりなので、効率良く調査できるだろうと、やや遅く、到着は10時半。土曜日のせいで、地下鉄も永田町も人は少なく、歩いているのは図書館へ向かう人ばかり。自分もその一人だ。
 パスワードを変更してあったので、受付もさっと終わる。事前にメモしてあった本を検索して借りる手続きをして、すぐにレストランへ。モーニングを注文したのも前回と同じ。
 腹ごしらえしてからカウンターへ行くと、請求した3冊が出てきていた。それらを持って複写コーナーへ、すぐに依頼書をプリントアウトする。該当ページを選んで記入してから、一気に「即日複写依頼」へ。
 その間に、事典類を並べている閲覧室へ行き、大名・旗本の事典を次々に開いて、目的の人物の掲載してある部分を探す。3冊になった。またすぐ複写依頼書をプリントアウトし、持ち出し手続きをして、再び複写コーナーへ。
 ところが。
「まだ前の3冊のコピーが終わってなければ受け付けられません」
 急ぎすぎると、こういうことになる。
 結局、今日は9冊の複写を依頼できた。最後の2冊のコピーを依頼した後、ようやく昼食にした(ピザトースト)。
 昼食が終わって、コピーをもらって、国会図書館を出たのが午後2時半だった。
 手際よくやったつもりでも、滞在時間は4時間である。
 運良く、新橋駅行きのバスが来たので、それに乗った。
 みどりの窓口で東北新幹線郡山までの切符を買った。
 宇都宮駅を通過する時、窓の外は雨だった。
 実家へ着いた夜、久しぶりに執筆再開した。

7月17日(日)「ゴキブリ・ハンターとゴキブリを踏む男とどっちが強い?・・・の風さん」
 今日も3週間前の再現である。
 福島を出発するギリギリまで執筆に専念した。まずまずのペース。
 東京も福島も暑いことは暑かった。福島空港を出発するとき、気温は31度だった。しかし、それほどの猛暑と感じないのは、愛知県の猛暑に慣れているせいかもしれない。
 確かに、29度のセントレアに着いたら、暑いこと暑いこと。湿度が関東地方とは全く違うようだ。汗がだらだら流れる。しかし、汗をかくことを気にしなくなっているので、とりあえず平気をよそおっていられる。
 ワイフの迎えの車に乗り込んだが、自宅へ直行しない。迂回して、JRの駅で来週の出張のための新幹線の切符を買っておき、それからガソリンスタンドに寄って・・・(以上、よけいな話か)。
 帰宅すると、またまた速筆の作家から新刊が届いていた。若桜木虔著『石廊崎・堂ヶ島 万博船の殺人』(実業之日本社 838円税別)である。ノベルス。南となつみ、美人コンビ・シリーズ物の第3弾(?)である。どうしてこうも連続的に新作が出るのだろう。不思議がるくらいだから自分ではできないのだが、うらやましい限りだ。いや、うらやましい、などと指をくわえていてはいけない。当面の作品を頑張らねば。
 夜、執筆の続きをした。何とか、ある区切りまで書き終わった。これで下書きの枚数が320枚になった。
 深夜、階下に下りて、また書斎に戻っていたら、珍しく次女が部屋をノックしてきた。
「なんだい?」
「台所でペコ(我が家の2匹目の猫)がつかまえたゴキブリを、お父さん、踏んでしまったよ」
「@@@・・・」

7月18日(月)「ゴキブリ・ハンターの活躍・・・の風さん」
 怒涛の1週間が始まった。
 最近、会社ではデスクワークを嫌って、とにかく体を使って仕事をするようにしている。特に会議はできるだけ出ないようにして、自分で確認したり自分で実験したりしている。その方が納得がいくし、解決が早いことも多い。問題は、他の仕事を他人に任せてしまうことで、大量の仕事に対して、全体を見ながら一つ一つの課題に対して適切な判断をすることが難しくなる・・・ことがある。
 ま、とにかく、体を使っている方が、心身には良いようだ。
 帰宅したら、我が家のゴキブリ・ハンター、ペコがまたゴキブリをつかまえたらしい。玄関の靴の裏でひっくり返って虫の息(ゴキも虫か)になっているゴキがいた。
 役に立たないシルバーと違って、ゴキ・ハンターのペコはありがたい・・・って、我が家はゴキブリ館か(笑)。
 書斎で新鷹会の仕事をした。まだまだやることがある。

7月19日(火)「どこまでも続くよ、新鷹会の仕事・・・の風さん」
 今夜も、書斎で新鷹会の仕事。
 それが終わってようやく執筆に着手したのだが、・・・さすがに疲れて仕事にならなかった。
 とりあえず国会図書館で手に入れたコピーを整理・・・していたら、前にコピーしたものと同じものが出てきた〜!
 ばかもの〜!
 明日は、新鷹会の関係で電話をかけなければならない。はたして多忙な会社生活の中でできるか??

7月21日(木)「素朴な豆の花・・・の風さん」
 東京は珍しく涼しかった。
 夜、名古屋へ帰ってきたら、暑いこと、暑いこと。ハンパじゃない。
 ま、とにかく、久しぶりに緊張した東京出張だった。
 帰宅したら、ワイフから、
「マ・メールの花が咲いたよ」
 という報告。
「え、え、ええ〜?!」
 驚いて庭に出てみると、ホントだった。
 急いでデジカメを取ってきて撮影した。
 
 夜のしじまにストロボの光を受けて浮かび上がる素朴な豆の花。
 この分だと、I LOVE YOU のメッセージが、めでたく結実するかもしれない。

7月22日(金)「宮部みゆきさんの本・・・の風さん」
 今日は名古屋へ出張。暑かった〜。36℃を超えていたろう。
 仕事はセミナーの講師で、同じ内容で回を重ねるうちに、だんだん喋りが慣れてきた。
 帰りに名古屋ツインタワー内三省堂に寄って、宮部みゆきさんの『弧宿の人』(上)(下)を買った。ヒットしているようで、山積みされていた。装丁が素敵だ。新人物往来社としては奮発したのだろう。今度、自分の本もこんな装丁にして欲しい(笑)。ワイフは宮部みゆきさんのファンで、ほとんど読破している(買ったのは私なのに)。今度こそ、ワイフに先を越されずに読むつもりだ。
 夜、床屋に寄ってから帰宅した。

7月23日(土)「早くも私の夏は終わった・・・の風さん」
 朝刊を読んで落胆した。夏の甲子園、地方予選の結果である。順当にベスト8に勝ち進んだ母校、秋田高校が秋田経法大付属に負けた。ガックリ。静岡県では若桜木虔さんの静岡高校が勝ち進んでいるし、大阪では大野優凛子さんのPL学園が勝っているし(これは当然か)、甲子園でまみえる日が今年こそあるのではないか、と密かに期待していたのに・・・。私の夏は終わった(涙)。
 今日は1日中どんよりした空模様で、あまり暑さは感じなかった。私の夏が終わったせいではない。最近、会社の仕事が慌しく、執筆の遅れを取り戻すチャンスとばかりに書斎に籠もったが、昨夜の睡眠だけでは疲労はとれていなかったらしく、少し昼寝しなければならなかった。でも、10枚は書けた。明日は最低20枚は書くつもりだ。
 夕方、関東地方で震度5強の地震があったと、夕食の時に家族から聞いた。東京が作家としての活動拠点なので、知人も多い。ここ東海地方ほど地震慣れしていないだろうから、突然の強い地震には驚いたのではないだろうか。

7月24日(日)「スポーツ評論家の風さんの巻」
 今日の朝刊をチェックすると、静岡高校もPL学園も勝ち進んでいた。プロ野球オールスターでは、新庄がスタンドを沸かせたらしい。本当にプロらしいプロだ。本当のプロというのは、アマチュアのように必死に全身全霊を投入してやっとそこそこの活躍をするのではなく、ある程度の余裕をもってファンを楽しませることができる、つまり実力に余裕がなければできない。そこへ行くと、私など、作家としてまだまだアマチュアに近い。
 続けて、大相撲のところもチェックした。今場所はついに朝青龍と琴欧州の対決になりそうだ。本割では琴欧州が勝っているから、これは見ものである。・・・学生時代は、野球も相撲もゴルフも何でもかんでもプロスポーツ観戦が好きだった。就職したら一気に時間がなくなった。しかし、その名残りで、新聞紙上での観戦を楽しんでいる。いっぱしのスポーツ評論家みたいなものだ。相撲はまもなく朝琴時代がやってくると予想している。
 さて、執筆に入らねば・・・。

7月27日(水)「午前3時のつぶやき・・・の風さん」
 台風7号が去ったら、朝からセミの声がやかましい。これから本格的な夏の訪れか・・・と思いがちだが、既に夏至(黄経90度)を過ぎて1ヶ月以上になる。太陽は着実に遠ざかりつつあるのだ。それでも地上が暑いのは、それまでに暖められた熱がまだ残っているからだ。
 日本列島にまだ熱エネルギーが残っているように、私の肉体にも、今年前半までに筋トレで蓄積した体力が残っていた。が、そろそろ底をついてきたようだ。筋トレを中断してまで執筆に励んでいたので、いつかはこういう事態になることは覚悟していた。
 バイオリズムをチェックすると、現在、めったにない絶好調の期間にある。ところが、心身ともに疲れていて、不調である。会社でもイマイチ冴えないし、帰宅してからも疲労がどっと出て、踏ん張れない。
 今日は、会社でなるべく体力を温存したつもりだったが、その分、精神的には疲弊した。じっとして頭の中でめまぐるしく戦略を練るのは、とても楽しいことだが、恐ろしいほどエネルギーを消費する。受験勉強をしているときのようなものだ。
 とにかく、なんとか、まだ日が高いうちに退社した。田舎道をミッシェルでぶっ飛ばして帰宅するのは爽快だ。草原や稲田をわたる風は、台風一過の名残を含んでいてさわやかである。夕日は次第に西に傾いて、みるみる景色が色褪せていく。木々が不気味な影をまといながら大きく揺れだす。風が一段と強くなる。その中を、風と一体になってミッシェルが爆走するのだ。
 帰宅したら、いつもの疲労がまた出てきて、夕食後、ソファで爆睡してしまった。・・・起き出して、今、午前3時。

7月30日(土)「駄作の映画で勉強する風さんの巻」
 運動不足と疲労というアンバランス効果で、首の痛みが最近増している。昨日は早めに退社して整形外科へ行きたかったが、その時間がとれなかった。その代わり、休息だけは十分にとろうと、早めに寝た。
 やはり体調がイマイチなのだろう。9時間も寝てしまった。
 今日は、前々から予定していたスケジュールのために、ワイフと名古屋へ出かけた。執筆が遅れていて、会社の仕事もかなりきつい状態なので、普通ならとても外出している余裕はなかったのだが、お互いに多忙な夫婦なので、こういう強行スケジュールでないと、なかなか統一行動できない。
 先ず、デパートで私のサマースーツを購入した。年中時間的な余裕のない私は、着る物がなかなか更新されない。平気で20年以上も前に買った服を着ている状態だ。ぐるりとフロアを一周してみると、「SALE」の赤札がそこらじゅうにかかっていて、どれもこれも安い。しめた、と内心喜んだのだが、結果はとんでもないことに。「あ、これいいな」と足をとめたところで店員につかまり、ふた言み言言葉を交わしているうちに、目をつけたスーツにだけは赤札がついていないことが判明した。赤札がついている方は、やはりそれなりにいわくつきなのだそうで(デザインや製造がちょっと違う)、パッと見ていい物はやはりいい物なのである。結局、それにしてしまった(笑)。
 次に、映画鑑賞である。これはワイフの好きなトム・クルーズが主演している「宇宙戦争」を見た。ところが、昨夜、インターネットでチェックした上映時間が間違っていたために、タッチの差で次の時間にずれ込んだ。ま、それは昼食の時間と交換することで、なんとか対応したのだが、ようやく観た「宇宙戦争」は駄作であった。駄作だったから損したと思っていたのでは、本当に大損となる。これは新鷹会の勉強会と同じで、問題のある作品ほど勉強になるのだ。「宇宙戦争」の最大の欠点は、主人公の頑張りで宇宙からの侵略を撃退するストーリーになっていないことだ。地球上に無数に存在する細菌やバクテリアの働きで知らないうちに宇宙人らが死んでいくなどと知って、誰が感動するものか! 第2の欠点は、主人公が必死に守ろうとする家族つまり息子と娘のキャラ設定が悪過ぎる。息子は聞き分けのない愚か者で、何の技能もないくせに軍隊に混じって鉄砲を撃ちたがる。とうとうトム・クルーズの手を振り切って軍隊に飛び込んで行きやがったくせに、ラストではボストンの家族のところへさっさと逃げていたことが分かるから呆れて物が言えない。娘はギャーギャーわめいてばかりのジコチューで、誰がこんな娘に育てたと思いたくなる。恐らくそう育てたはずの別居中(?)の妻とその両親の元へ、トム・クルーズは必死になって向かおうとするわけだから、納得できない。
 私ならこうしたい。もし宇宙人の弱点が地球上の微生物にあるのだったら、それを最初に発見するのがトム・クルーズでなければならない。それを軍隊へ教えるとかして、バリヤーを破壊して、宇宙人に微生物汚染攻撃を仕掛けるのだ。そこへ行くまでの間には、当然、家族のドラマが並行して進む。別居中の妻から子供らを一時的に預かるのは、たとえば裁判の結果得た権利というより義務みたいなもので、子供らは父親のことをちっとも愛していない。理解していないのだ。ところが、この非常事態の中での父親の働きを見て、母親とは違った強い父親という存在感を目の当たりにする。母の愛と父の愛の違いを実感するのだ。こうして、最初は父親に逆らってばかりだった子供らも、父親と一緒になって宇宙人と戦おうと立ち上がる。
 そして、ついに宇宙人を微生物の力でやっつけるのだが、宇宙人とバリヤーなしで戦ったトム・クルーズの体には宇宙人の血が(つまりDNAが)入り込んでいる。映画の中でトム・クルーズが光に手をかざすシーンが出てくるが、彼の指が意外に細く長いことに気付いた人は多かったのではないだろうか。その宇宙人との類似性! 
 ラストでは、ボストンで無事だった家族が抱き合うのはオッケーだ。特に夫婦が抱き合うべきだろう。横で、子供らが、別居中の夫婦を仲直りさせようと作戦を立てているほほえましさが必要だ。と同時に、トム・クルーズは妻を右腕だけで抱きしめているのだが、左腕は後ろに回して隠している。カメラはゆっくりと背後に回っていき、やがてトム・クルーズの左腕から手の方へ下がっていく。異常に細く長くなったトムの手の指がクローズアップされる。それは何を意味しているのか、当然観客には理解される。そのまま、カメラはゆっくりと引いていくのだ。
 全滅したかのように思われる宇宙人だが、トムの体の中にDNAとして埋め込まれていることが暗示される。それは、地底に何百億年以上も前から埋め込まれていた巨大トライポッドがよみがえったように、いつかまた人間を襲う日が来ることを予感させて映画は終了するのだ。
 こういったことを考えるのが、新鷹会の勉強会で、駄作ほど、さまざまの改善案が浮かんできて、非常に勉強になる。だから、「宇宙戦争」が駄作であったことに感謝してもいいわけだ。
 スケジュールは、それで終わりではない。映画を観た後は、愛知万博のサテライト会場のひとつ、ささしまで開催されている「デ・ラ・ファンタジア」見学である。「デ・ラ・ファンタジア」と書くと、何となくイタリア風の響きがあるが、「デ・ラ」とは名古屋弁の「どえりゃー」のもじりで、「でらうま(すごく美味い)」と同系統であろう。
 あおなみ線に乗車して、会場へ向かったが、今日もひどい暑さだ。
 お目当ては、手塚治虫コスモゾーンの大西貴之さんが製作したメガスターUである。これは500万個の星を映し出すことができるプラネタリウムで、天の川だって、一つ一つが星になっている。しかも、大西さんは、このメガスターを自宅の自室で作るというびっくり仰天のことを成し遂げた。
 長久手本会場にあったなら、恐らく容易には見学できなかったろうが、ここ、ささしまに設置されていたことが私には幸いした。待ち時間ゼロで観られたからだ。しかも、会場内は写真撮影禁止というアナウンスがされる前に、私はちゃっかりメガスターをデジカメで撮影してしまった。
 残念だったのは、手塚治虫ワールドが主役で、メガスターは完全に脇役に徹していたために、その圧倒的な星の多さや技術の高さ、リアリティ、製作の苦労などが、観客にアッピールされていなかったことだ。通常のプラネタリウムの投影と比較して見せるなど工夫すれば、手塚ワールドと同様に、感動的だったはずだ。
 映像を見た後に、手塚治虫の原画展を見ることができ、非常に感動した。手描きの線は太さが微妙に変化していて、CGとは違う人の創作という芸術性(あるいは巧みの技?)を感じた。また、ミスノンを使用した修正の後とか、文字は別に印刷したものを切り貼りしている様子など、技術的なものもしっかり見られて面白かった。
 夜になっても気温が下がらず、非常に暑かったが、夕食はライブを聴きながら楽しんだ。今夜は、黒田里美が歌っていた。声が宇田多ヒカルに似ていて(この声が私は好き)、歌はうまい。踊りも練習している感じがする。そして、可愛い。ただ、18歳という若さのせいだろうが、自分が持っているパワーをまだまだ発揮しきれていない。決して小柄ではないはずなのに(165cm)ボデーアクションが小さい。ステージ全体を自分のものにしていないし、少ないとは言え、目の前に180度広がっている観客を自分に向けるテクニックがまだないようだ。自分から見て右側とか左側とか、目の前とか、大向こうの方とか、観客を意識してとらえることにより、自分と観客を一体にできるはずだ。宝塚のショーなどを見学すれば、そのへんの呼吸を学べるのではないか。今後の成長が期待できる(って、私が期待してどうなるものでもないが)。
 暑くて消耗しそうな日だったけれども、それなりに飲んだり食べたりしたから、明日に持ち越すことはないだろう。とにかく勉強になったなあ。

7月31日(日)「プロ野球がまた再燃?・・・の風さん」
 朝刊を見たら、中日が10連勝していた。阪神との差は4ゲーム差となった。高校野球の方は、静岡高校もPL学園も、母校の秋田高校と同様に準々決勝で破れ、今年の夏の甲子園は終わってしまったが、プロ野球のペナントレースはまた熱くなりそうだ。昨日の名古屋では、私はウェストバッグだけで歩き回っていたが、そのウェストバッグのファスナー部分には、阪神タイガースのマスコットがついていたのだ。

05年8月はここ

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